program note
 
 
Friday, February 6, 2009
 
年長組は今回あまり出番がありませんでしたが、第8巻で最終学年の残りのエピソードを収録する予定ですので、ここにそこで登場する曲も掲載します。
 
まずは縁結びの曲(笑)、ボッテシーニのグラン・デュエットから。
残念ながら、この録音、非常にオタクな録音でして、多分もう何処でも手に入らない上に、演奏家が全く解りません(汗)。なんとかCDがみつからないかと探したのですが、ダメでした。
何がオタクかって、原曲はもともとコントラバス二本のためのデュエットで、それだけでも録音探すの難しいのに、これはそのうち第一コントラバスをヴィオラでやっているというキワモノなのです! ヴィオラ弾きが出したCDあたりに入ってたんでしょう、きっと……(私も友人から貰ったので知らない)
 
Bottesini Gran Duetto for two double-bass (arranged for double-bass and viola)
 
 
まあ、びよらで弾くのはともかく、これをこんとらばすで弾くのは大変だよね(笑)。そりゃ、ちゃんと真面目に練習して指にタコが出来てなければ、摩擦熱で火傷もするわな、ロス兄。
 
 
 
お次は、ロード・パーフェクト様のチャイコフスキーです。
この曲の録音は、それこそ星の数ほどあるでしょうし、皆様にももしかしたらお気に入りの演奏があるかも知れませんが、ここは是非五嶋みどりにさせていただきたい!
もう、あらゆる意味で素晴らしすぎます。テクニックは勿論だけど、とにかく一秒たりとも退屈だったり辻褄があってなかったりするところが無いのです! いや、チャイコって、メロディ綺麗なんだけどね、結構つまんない繰り返しが多かったり、ちょっとした加減でダサダサに聞こえちゃったり、楽譜通りにやっちゃうと、あー、やっぱりベートーヴェンやブラームスほどの構成力はないわね、っていうのがモロ見えに見えてしまう難しさがあるのですヨ。それを、Midoriちゃんはうまーく弄って完璧に隠しているのです! 楽譜見ながら聴いてたら「エッ?!」って思うようなリズムで弾いているところも沢山あるのだが、それが全然不自然に聞こえない。よくいる感情に任せてリズム崩して批評家に「やりすぎ」って言われるのとは全く対象で、あんなに弄っているのにそこを指摘する批評家が殆どいない、ってくらい、自然に聴かせる。
この演奏は、また、アバド&ベルリンのオケが洒落てるのですよ……一楽章、6分30秒くらいのところで、ヴァイオリンのソロが暫く休んでオーケストラのトゥッティ(全員で弾く)になるところがあるのだが、これ、殆どの演奏でトランペットが凄く安っぽく聞こえちゃうのに、すごく上品。流石にベルリンフィルですな。ロス兄がこんな指揮したら、サガでなくても惚れるよね、ってことで、兄には棒振ってもらうことになりました(笑)。
まあ、ミドリちゃんの持ち味は素直な女の子らしさ? でもあるので、エセルバート君がこんな演奏をするか、といったら多少疑問な気もしないでもないけど……ま、サガじゃなくてエセルだからな、大丈夫か(おい)。
 
Tchaikovsky : Concerto For Violin And Orchestra In D Major, Op 35
五嶋みどり(vn),  クラウディオ・アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ソニー・クラシカル SICC10010
 
 
このチャイコフスキーとカップリングされているショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲ですが、まあ、曲が素人受けする曲ではないのだけれども(なんせショスタコだから)、三楽章のパッサカリア(の前半)だけはあまりの美しさに涙出ますよ、ホント……(TT) いつか、サガに弾いて欲しい曲です。
 
 
 
最後はもいっぱつチャイコフスキー、ただし、弦楽セレナーデです。
ロスとサガの学年が卒業するときに、卒団記念に披露した曲。こんなに美しい曲なのに、某コマーシャルに使われてしまったお陰で、すっかり「オー人事」の曲になってしまいましたが(涙)コマーシャル業界というのはたまに困ったことをしてくれるもんです。
 
これは和海がダウンロードしてきたThe Academy of St. Martin in the Fieldsと、ベルリンフィル、どちらも捨てがたいので、思い切って両方収録。
 
Tchaikovsky : Serenade for Strings in C, Op.48 - 1
Karajan / Berliner Philharmoniker
実は私は自他共に認めるアンチ・カラヤンなのですが(笑)これは、いい音してるんだよね…特に最初のアダージョの迫力が……楽譜通りにやれば、Academy of St. Martin in the Fieldsがやってるみたいに三拍子系になるのでしょうが、これはやっぱり、弦楽器の意地にかけても(なんの意地だ?)ギリギリまで引っ張って鳴らしたい和声だと思うのですヨ。
 
 
 
Marriner / The Academy of St. Martin in the Fields
これは、三楽章のエレジーがとても情熱的でいいですよvv なんてったて卒業演奏ですから、是非このくらい暴れて欲しい(笑)
しかし、今冷静に考えてみたら、この音の厚みはどう頑張ってもたった一学年じゃ出ませんな。最低でも、下級第六学年くらいには手伝ってもらわないと……
 
 
 
 
 
おまけ(笑)。
5巻で、サガが一学年上のエリオット・リードと組んで演奏していた、クライスラーの「前奏曲とアレグロ」を収録しておきます。
これも、五嶋みどりの演奏で。というのは、これが多分世界のMidoriのすごさが分かるいい例だと思うからです。コレ、実は最初50秒間、ヴァイオリンの楽譜には四分音符しか書かれていないのですよ! つまり、延々同じ長さの音符が続くのです。とてもそんな風には聞こえないですが、彼女の演奏には原曲を無視して過大解釈したような不自然さも全くないです。私も楽譜を初めて見たとき、こんなつまんなそうな楽譜だったのか、と驚きました。もう、耳がミドリ節を覚えてしまったので、これ以外考えられませんが、この演奏を知らなかったら、延々と続く四分音符をどう弾けばいいかかなり悩むと思います。
こういうテンポを自然に弄る上手さ、というのは、実は戦前の一流演奏家には当たり前だったのですが、戦後そういうのは原曲を無視する行為だ、という風潮が少々いきすぎて、すっかり廃れてしまいました。メニューインは戦前から活躍していた人なので、彼の演奏にはそういう洒落た上手さがあります(たとえばブラームスの「雨の歌」の出だしを聴き比べてみると、他の演奏家よりかなりテンポが自由。賛否両論あるでしょうが、私はあの部分では彼の解釈の方が洒落ていると思います)。もう彼で最後なのかな、と残念に思っていたら、五嶋みどりがしっかり受け継いでいた、というのがとても嬉しいです。まあ、彼女は、それこそ「メニューインの再来」と言われた人ですが……。
 
クライスラー:前奏曲とアレグロ
五嶋みどり(Vn) / ロバート・マクドナルド(P)
ソニー・クラシカル SRCR 9055
amazon mp3 download(ダウンロードリンク)
 
 
もし、ヴァイオリンの小曲集がひとつ欲しい、と思っておられるなら、このCDはイチオシです。タイトルは「Encore!」、文字通り、アンコールに最適な小品ばかりです。
 
 
Los & Saga : Bottesini, Tchaikovsky