一難去ってまた一難

殃禍再び。の感。


15日午後、エセルの愉気が利いているのか、そこそこ食べ糞をし、水を飲まない事だけが難点だったが、それでも随分と快方に向かっているようだったプチの様態ががらりと変わった。
その日の朝、水を飲ませると夕方までにはペレットも食し、糞も撒き散らし、ローヤルゼリー入りの100%オレンジジュースも飲みきったプチが「食べない・動かない・飲まない」に陥り、エセルはその日殆ど徹夜で、水分をシリンジで補給させ続け、強制給仕も試みた。
が、翌朝、朝日が白々と差すころになっても改善は見られず、再び大学病院に連れ込むことに。
俺はどうしても抜けられないクライアントとの打ち合わせがあったのでエセル一人で行かせた。また尿を搾り出してもらえばなんとかなるだろう、とそんな感じでいたが、10時の予約で行ったはずのエセルから昼を過ぎても連絡が入らない。
で、こちらから電話をしてみると、
「最悪の状況に近い。手術か安楽死か二つに一つだと……」
悲壮感漂う声が電話から返って来た。
この電話までの間に、圧搾による導尿を試みるも機能せず、カートの薦めにより再度ソナーによる診断を行ったところ、やはり子宮切除部分の感染部が肥大しており、腎臓に尿の逆流現象が見えた。このことによりこのままでは腎臓が機能障害を起こし、苦しみながら死に至る。もしくは化膿部の破裂、膿が腹部に散ればやはり苦悶の末に死。
上記の状態からカートとしては血液検査で手術に耐えられる数値が出れば明日、出来れば今すぐにでも手術を行いたいとの事。
手早く仕事の必要最低限のケリをつけ、市内の大学病院へ。
現在行っている手術とその次の手術が終わり次第の開始と言うことで、手術開始まで病院内のエキゾチックアニマル用の小さな診察室でプチと共にエセルと待機。
その間、朝飯も食っていないというエセルに昼を無理矢理食いに行かせ、カートのアシスタントのアンが麻酔の為にプチを連れに来たのが午後3時前。このままここで待つか、いったん帰るか尋ねられ、取り合えずエセルに仮眠をとらせる為に一旦帰宅。
どんな結果になろうと、今晩プチは入院なので、長いこと犬用パネルの中で共同生活を強いていたハムとえせるに久々にリビングを全面解放。(ただ今プチとえせるは犬猿の仲。プチの避妊手術前、子供を抱えていたプチは非常に縄張り意識が強く、プチがえせるに手酷い傷を負わせた事をいまだにえせるは根に持っていて、プチの匂いがするものにまで敵意をむき出しにして唸り、挑みかかる)
6時に一度カートから電話。
まだ手術中。予想と全く違った状態で、非常に複雑な事態になっているとの事。とにかく時間が経ち、心配していると思い電話をした。また終了しだい電話をする、との事。
そして、8時に手術終了の電話。
電話では説明できない程込み入ったものだったらしい。翌日来院時に詳しいことを説明するとの事。今はなんとか麻酔から目覚めた、との事。尿が自力で出来るかどうか分からない、と。
とまあ、こういった流れで本日9時、エセルと連れ立って大学病院に行くと、直ぐに待合室の奥へと伸びる廊下の向こうからカートが現れ、そのまま診察室ではなく、人間で言うなら病室に連れられて行った。
犬猫一緒の白い部屋の中は、壁に動物用のケージが二段に組み立てられ、その上の段にプチは居た。
うちのウサギでは一番神経質で臆病なチビは、犬猫に怯える風も無く、ただ一心に自身の回復だけに集中している様子だった。エセルの差し入れた腕からは逃げ、差し入れに持ってきた生野菜のうち、ブロッコリーの茎に口を付け、食む。
カートの言によると、昨晩自力で少量の尿を排出したとの事。注意深く見れば、黒く小さく干からびたような胡椒の粒のような糞も数個あった。
いつもの診察室で、手術の説明を受ける。
当初、感染・化膿と思われていた部位は実は子宮管に溜まった尿であったと判明。右の子宮管が風船のように膨れ上がり、左の子宮管は左腎臓に繋がる管と癒着を起こしその道を塞いでいたとの事。
右腎臓の正常な機能は確認出来たが、梗塞を取り除いたのちの左腎臓機能の有無は未定。いまだにをいきむ動作をする事から再発の可能性も未知。ただ、残った子宮管を可能な限り切除したのでここに尿が溜まる事はない。
溜まっていた尿からバクテリアが検出されなければ、当初もっとも危惧していた抗生物質づけの生活にはならないですむだろう。
最後に、今までの体調の思わしくない変動が全て夜間に発している事から、今晩も病院内にて24時間監視体制下においてもらう事に。
いやはや、こんな医療費、俺だって使ったことはないんじゃないか?

コメントを残す