Diary

「カミュ、ピアノ科次席だって？　すごいね！」 　１年次に何かと副科で組むことが多かったファゴット専攻のマリオ・カッシーニがそう声をかけてきたとき、カミュ・バーロウはようやくピアノ科の師匠のユーリのシゴキから解放された直後 […]

「どうして、お前は何もかもそうのんびりなんだ？」 　はあ、と深く息を吐く敬愛する師匠を前に、俺はぎこちなく口角を上げて答えを誤魔化すしかできなかった。 　ロベルト・ドニゼッティは聖チェチーリア音楽院でもう三十年以上教鞭を […]

ファーマーズマーケットで、つい３個１ユーロの誘惑に負けてビーツを買った。 さて、買ったはいいが、どうやって料理するか思案。

　イギリスの厳しい冬に比べれば常春に近いようなこのローマでも、暦の春が訪れればどこからともなく春の香りが立ち上る。狭い住宅のベランダの僅かな隙間に置かれた鉢植えの花や、街路樹のさわやかな緑の葉擦れに、甘い花の香りや若々し […]

この年になると、誕生日なんて……というのは去年散々愚痴ったので、今年はやめにして。 今日一日の記録。

ミロに、バレた。 実際のところ、最初から、いつかこうなることは分かっていた。 ミロは、気配に敏感だ。何度も一緒に朝を迎えて、そういう気配の変化をミロが好意的な眼差しで見詰めていたのを知っている。 体の関係を持てば、次の日 […]

　どうして判る？　と聞かれても、判る、としか答えようがない。敢えて言うなら、それはカミュの事だし、自分自身で何回も見てきた事だから、だ。 　カミュが、俺のアパートメントからピアノの師匠の元に居を移してから数か月、深々とし […]

神としてのイエス・キリストを信じるか、と言われたら、あまり、と答える。 二千年も昔に自分以外の者への愛を説いたこと、その史実に敬意は払うけれど、別に神でなくてもいい、と思う。むしろ、キリストが自分と同じ悩みを抱え、同じ過 […]