漸く戻って来た……

とにかく、寒かった……(涙)


だからこの時期にキャンプなどとクレイジーだと主張したのに、折しも訪れた寒波で夜は毎日氷点下。
いくら寝袋の性能が良いと言ったって、限度がある!
川の水は氷のようで、とても水浴びをするどころではなかったし(それでも無理矢理浴びたが)、夜テントの中で迫られても寒くて衣類を脱ぐ事も出来ない。無理だと言ったら、じゃあズボンだけ下ろせなどととんでもない事を言った!
三日耐えたが、四日目にはどうにも我慢出来なくて、無理矢理下山したら「約束が違う、最後まで付き合え」と大変なブーイング。話半分に聞いていたが、夜になってもまだ食事に出ると偽って山へ戻ろうとしたので、ついに切れて思わず叫んでしまった。
「こちらは寒くてとてもそんな気になれないし、大体シャワーもない環境で事に及ぶのは嫌だと再三言っているだろう!!!
 君はいいかもしれないが、私はちっとも気持ち良くない! 自分なら何をしても人を楽しませられるなんて、自惚れも良い加減にしてくれ! 性欲処理なら勝手に一人でやれ!!!」
あまりに腹が立ったので、赤信号の隙に助手席のドアを開けて下りる。タクシーでもつかまえようと道沿いを歩いていたら、先の交差点でターンしてきたらしいアイオロスに呼び止められた。漸く、こちらの本気を悟ったらしい。渋々といった体で、漸くホテルへの道を辿り始めた。
全く、一度火がついてしまった彼の故郷への郷愁は、そう簡単には落ち着いてくれないらしい……。
翌日、部屋で朝食を取りながら外を眺めるアイオロスは心ここにあらずで、私はついに妥協案を提示した。
「……実家に、キャンプが出来る森がある。あの山よりは標高も低いし、シャワーを浴びに戻るのも簡単だ。どうしても寒ければ、追加でブランケットを持って来る事も出来る。そこでキャンプの続きをするというのは? もしかしたら、カノンも喜んで参加するかもしれないし……」
かくして、我々は実家の森に流れる川のほとりにテントを張り(流石にこの川の水を飲食に使うのは無理だが)、カノンを誘って残りの三日間のキャンプ生活を完遂した。カノンはアメリカで散々体験したキャンプを思い出し、毎晩楽しくアイオロスと飲んでいた模様。私はと言えば、夜には必ず戻って来い、と念を押されてはいたものの、彼等が魚釣りに興じている間に久々に実家の図書室に通い、それなりに充実した休暇を送った。
とにかく、夜寒かった事を除けば、全体として(特に後半)そう悪くない休暇だった、と言える。
……だが、この休暇の目的は、こういう事ではなかったはずなんだが……(汗)
クリスマスあたりに、「やり直し」などとアイオロスが言い出さない事を祈る……

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