怒られた。
これから出かけて来ると電話をしたら、わざわざそんな事を言いに電話を掛けるなと”非常に”シブイ声で返された+溜息付き。
いつも居場所をはっきりさせろとか、携帯を携帯しろとか、色々言うくせに!
(いつも連絡している時間帯に電話出来ないからそれを伝えたかったんだ!)
左肩に携帯電話を挟みながら、着替えを探して狭い部屋の中をうろうろと歩く。
カミュが実家に戻ってピアノの練習をしていると知ったので、調子を尋ねるとこれまたニガイ返事。
(–あ、カフス、こんなところに有った!)
音楽ついでに、自分とピアノの絡みの部分で不明瞭な場所があったので確認を取る。
(髪、何でまとめて行こう…)
細かい打合せは今週の土曜日に出来るけれど、何よりも通しで四人で合わせる方が重要事項だから、二人で話して固められるものは固めておいた方がいい。一応、カミュから本家のCDは借りて来ているけれど、これをただコピーしたのでは面白くないよな?
(やっぱり、靴を昨日の晩のうちに磨いておいて良かった…)
電話の向こうかでメモを取る音が聞こえて、簡潔な確認の言葉が返る。
面白いなぁ…音大の奴等に勝るとも劣らない反応の速さと的確さ。やっぱ子供の頃からの合唱経験とか生かされているのかな?
(戸締りの前に、もう一度電気・火の元の確認をする。よし、大丈夫)
ドアの閉まる音を聞いてか、カミュが電話を切ろうとする。
「まだ階段に行って降りるまで時間あるよ?」
と言うと、兎に角、病気と責任を取らなくてはならなくなるような真似だけはするな、との事。はい、はい、はいと返事をしたら電話の向こうは一瞬黙って、それから
「気を付けて」
との事。
今日は久しぶりに冬の青空が広がって、日差しが真っ直ぐで目に刺さる。
別に、重大な必要性はないのだけれど、持ってる中では上等のスーツを着て、カジュアルでは無い靴を履いて、何処に行くのかというと、女の人を買いに行くのだから笑ってしまう。お金を使って「人の体を買う」という事が既にして色々引っかかる事なんだけれど、考えても仕方がないので中止。
そう言えば、サガから物凄く丁寧な断りのメールが来てたっけ。あんなに恐縮させるとは思わなかったので、ちょっと申し訳なく思う。帰ったら謝罪の電話でも掛けよう。
(ただ、この手の事で、サガがロスにからかわれる事があるから、誘っただけだったんだけど…)
出来れば、今日の相手の人が不愉快な思いをしないでくれて、オレも滞りませんように!(笑)
げっ! ガソリンがギリギリだ…!
成程、女性に会いに行く時は、それなりにめかしこんでいるのか。
うちに来る時は、ジーンズに着古しのシャツのくせに。
ふーん。
そうなのかい?
私の家に来る時も、それなりにきちんとした格好をしてくるよ? ミロは。
モデルをやっているから、普段から格好には気を付けているのだと思っていたんだが…
きっと、カミュの所が一番寛げる、ということなんじゃないかな(笑)。
いいえ、あれは、緊張感の欠如、と言うんです。
全く!