国際宅急便

ミロから昨夜電話がきて、忙しいところ申し訳ないが、CDを何枚か送って欲しい、と言われた。


探しているのは、私が持っているシェリングとオイストラフのCD。
ローマで買おうとしたが、どこも置いておらず、アマゾンで注文すると三週間待たされるが、出来たら今すぐ欲しいのだ、とのこと。
仕事がよほど煮詰まっていて、BGMをかけっぱなしで徹夜でもしているのか?
あいつは、気に入った演奏しか聞かないし………
勿論構わない、明日Royal Mailで送るから、と約束して、送るCDをパッキン入りの封筒につめていたら、ふと、キッチンに少々熟れすぎたバナナが残っているのが目に入った。
………。
どうせ、忙しくて、食事も疎かになっているのだろうし。
CDを一度つめた封筒から取り出し、キッチンのノートをとりに行った。
たしか……。
ページをめくっていたら、メモ用紙に書いたバナナブレッドのレシピが貼ってあった。
バナナ3〜4本。
小麦粉2カップ、ベーキングパウダー小さじ1、塩小さじ1/4 …は、面倒だから、self rising flourで代用。
卵2個。
サラダオイル 1/2カップ。
砂糖 1カップ。
バニラエッセンスと、ミルク1/2カップほど。
好みで、クルミやアーモンドなどのナッツ類を砕いたもの。
幸い、全部家にある材料で足りそうだ。
オーブンを350°F(約180℃)に余熱し、パウンドケーキ型にバターを塗って小麦粉をはたく。
卵、サラダオイル、砂糖を泡立て器で混ぜる。
砂糖は、アメリカのAmishの村で買って来たブラウンシュガーを使った。この砂糖は、素朴で、非常に上品な味がする。もう少し買っておけばよかったと、後悔したくらいだ。
これに潰したバナナを入れ、バナナの粒があらかた潰れたところでself rising flourと合わせ、バニラエッセンスを加える。
砕いたナッツを入れ、生地が固すぎると焦げ付くので、緩く流れる程度になるまでミルクで緩める。
これを型に流し入れて、オーブンで約1時間焼く。
初心者でも失敗しない、と、パリに居た頃、祖母が教えてくれたレシピだ。
久々に焼いたバナナブレッドは、昔祖母に教えてもらった通り、ふわふわで綺麗な焼き色に焼き上がった。
型からはずして冷まし、CDと一緒に箱につめる。机の上から付箋紙を一枚とって、一言。
「何も食べずに仕事するなよ! 能率が下がるぞ!」
それをラップで包んだバナナブレッドに貼って、封をした。
外は、久々のよい天気。
もうすぐ、春がやってくる。

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