先週末、エセルが風邪でダウンして、市場に行けなかった。
未だケフケフ咳をしながら冷蔵庫を覗いたエセルがいかにも大事件のように一言。
「大変だ! 野菜が無い!!」
別に、大変でもなんでも無いでしょう? という意見はあっさりと「うさぎがかわいそうじゃないか!」という一言で却下され、水曜の早朝に市場に出る事になった。
(まあ、目と鼻の先なんだが)
(ついでに言えば、俺は週末にはここに来てラム・バーガー食ったけど)
(来たくせに、野菜を買って来なかった事がエセルさんは気に入らないらしい)
(困ったさんだなぁ)
(まぁ、そこもかわいいんだけど)
きちんとエコ・バッグをぶら下げて忙しなく市場を行ったり来たりするエセルさん。
まあ、むやみに慌てる必要はないけれど、あんまりじっくりとモノを検分する時間は無いと思うぞ?
出勤時間が迫っているだろう?
玉ねぎ、ブロッコリー、ケール、葉付き人参、新じゃが、なんだか知らんが魚、グリーンオニオン、
結構袋に一杯詰めて、まだうろうろと市場の中を探索している。
「おい。それだけあれば十分だろう?」
「でも、まだイタリアン・パセリが……! うさぎ達の好物だし、カミュからおいしいイタリアン・リゾットのレシピを貰ったし……」
こらこら、エセル!
お前はチョロキューか!
何度も行ったり来たりを繰り返し、「あ!」と喜色を浮かべるエセル。
(可愛いv)
丁寧に一束のなんちゃらパセリを手にし、満足げに回れ右して帰路への一歩を踏み出したとき……
ゴツンッ
エセル、市場の出店のテントの柱に正面から激突した……。
クラシカル・コメディ???(汗)
慌てて近づくと、エセル、丁寧に柱に向かって「I’m sorry.」と謝罪した。
…………………。
ガハッ、と笑い声を上げた俺を、エセルは不思議そうな眼差しで見上げる。
手にはバンチ・オブ・グリーン。
不思議そうな顔の中には、目的を首尾よく達成した満足感と得意げな色がうっすらと広がっている。
か……かわいいなぁーもうー♪
はいはい、気にしなくて良いから! さっさとアパートに戻って、コート羽織って出勤しような? エセル。
ついでに、早く風邪治してね♪♪