学級崩壊……？

Angelがうちに来てから数ヶ月が経つ。
けれど一向にロス(うさぎの)との関係は進まない。
それどころが、二度に渡って彼女はロス(うさぎの)の家に飛び込んで、2つの巨大な毛糸玉のようになっての乱闘を繰り広げた。

うちに来た当初から、Angelはいま一つロス(人間の…)からの支持が薄い。
ハ○ー・○ッターに登場する屋敷妖精にそっくりだと、ロス(人間の…)は彼女をドビーと呼び始め、なんとかそれはそれは止めさせたものの(一ヶ月かかった……)、えせるを呼んだように甘い声で彼女を構いはしない。
掃除や食事などはきちんとしてくれるし、彼女の足裏にソアホックを発見した時には色々とＧ氏から貰ったアドバイスを基に、三種類もの床材を使って彼女の家を作り直してくれた。
そう、面倒見はいい、のだ……多分。でも、中々えせると同じような愛情は持てないようで……それはそれで仕方がない事だと思うし、Angelはうさぎのロスの為の友達うさぎなのだからいいのだけれど……そして、うさぎのロスが彼女の事が気になって仕方がないようなので、それはそれでいいのだけれど……。
肝心のAngelの方が……。
最低でも一才半くらいの年だと思われる真っ白なイングリッシュ・ロップの彼女は、どうもまだ一人で気ままに遊ぶ事の方が楽しいらしく、全くロス(うさぎの)の事を気にしてくれない……。
最近の彼女は、自分がロス(うさぎの)より居間に出してもらう時間やスキンシップの時間が短いという事を明確に理解出来るようになってきて、抗議の意思表示をするようになってきた。
そんな彼女を宥めるために構えば、今度はロス(うさぎの)がまるで天変地異でも起きたかのようにショックを受けた表情をする……。どうして自分が一番じゃないんだ？　と。
まるで子が親を慕うようにえせるに甘えていたロス(うさぎ)は本当に友達が欲しいようで、今はなりふり構わずスキンシップを求めてくる。
人間の足でも手でも、ぬくもりを求めて体を寄せてくっ付きたがり、首を伸ばしては舐めて(撫でて)とねだる。
そして、どんなに人間が撫でてやっても、うさぎのえせるがロス(うさぎの)にしてやったように、彼が満足のいくコミュニュケーションは取れなくて、やはりロス(うさぎの)はいつも寂しそうだ。
小さなぬいぐるみを今も舐めては舐め返してくれる事を期待しているように見える。
不憫に思って、なるべく言葉をかけ、遊んでやろうとすると、今度はAngelのみならず、ロス(人間の)がすねはじめる。
すねたロスはAngelをからかって鬱憤を晴らそうとする。
Angelが自分も可愛がれと主張する。
Angelに気をそらすとロス(うさぎの)が「なんでだよ？」と思い切り傷付いた表情を浮かべる。
ロス(人間の)がうさぎばかり構ってとへそを曲げる……。
今年に入ってから、この悪連鎖から抜けられない……。(苦)
一人ひとりが自己主張ばかりして協調性が失われてしまった状況だ。
全員の要求に応えるには、私の体は一つしかない。(苦)
監督生として寮の采配を任された時だってこんなに苦しくなかったような気がする……。(体力・気力的に……)
こんなに甘えん坊なロス(うさぎの)と、自己主張の激しいロス(人間の……苦)を上手にあやしていたえせる(うさぎの)は、ほんとうに凄い子だったな、と思う。
今年のバレンタイン、ロス(人間の)はえせるの写真立ての前にも小さなピンクのバラの花束を飾っていた。
小さなうさぎのえせるを懐かしく偲ぶとともに、Angelが少しでもえせるのようにロス(うさぎの)にやさしくしてくれればと勝手な希望を抱く。
多少なりとも運動できる時間が増えたからなのか、食事に生野菜を与えるようになったのが良かったのか、それともうちに慣れてきたのか、彼女の泳いでしまう頭の動きもめっきり少なくなった。
表情も飼いうさぎらしく、かわいらしいものになってきたと思うし、人間に撫でてくれとよって来る愛嬌や知恵もついたと思う。
ちょっと破れ耳になってしまったけれど、もしかしたら彼女を引き取ってもいいと言ってくれる人も現れるかもしれない……。
その方がAngelも幸せなのかもしれない……。
けれど、そうなるとロス(うさぎの)の片思いはそのままに終わって…新しい友達を探さなくてはならない……。
学級崩壊の現場に帰宅すると、祈るような気持ちになる自分に溜息が出る。
どうか、平穏がおとずれますように……と。