巷では、ウィリアム王子の婚約が近そうだと話題になっている。
殿下は現代の王室メンバーとしては珍しいほど、若い時分から大変な苦労をされ、国民の熱い期待の中重責を担って来られた。そんな殿下の意中の方は、富豪の令嬢で民間の女性であるらしい。
王室側も既に公認のためか、彼女の階級を取沙汰する報道が少ない事には救われるが、またしても報道が過熱気味だ。過熱報道のために殿下が失ったかけがえのない存在の重さを、報道陣は今一度思い出して欲しい、と切に願う。
さて、このことに関係があるのかないのか、遂に実家から連絡が来た。
曰く、そろそろ一度学問は切り上げて家に戻るように、と。
三年前にアメリカからカノンが帰国し、公式の場にはカノンが同行する機会も増えていた。いつまでもこのままでは居られないとは分かっていたが、遂に決断の時が来た、と言う事なのだろう。
しかし………。
机に向かい、下書きの紙を破り捨てる事三時間。
漸く、一通の手紙をカノン宛に書いた。
さて、激怒するのは目に見えているが、怒りながらも連絡をくれるか、父上にそのまま告訴するか、破り捨てて無視されるか、一体カノンはどうするだろう?(苦)