研究室の集中合宿で、暫く家を留守にした
えせるやロスの好きなダンディライオンの葉を沢山摘んで、一週間ぶりに帰宅。
覚悟はしていたけれど、トラッシュ・ボックスの中は出発前に買い溜めしておいたホットドッグの紙で溢れている。冷凍庫には、見覚えのないアイスクリームの箱。
部屋が煙草の匂いに染まっていなかったのは上出来だけれど、トマトのひとつもない冷蔵庫の中身と、油紙に包まれたラム肉の塊(一体幾らしたのだろう…)でこの一週間の食生活を知る。
……まさか、ウサギにまで野菜のない生活を強いていたのではないだろうね?!
摘んで来たダンディライオンを見せると、皆喜んで葉に飛びついた。
可哀想に、ウサギなのに草を食べさせてもらえなかったのか。不憫に思い、えせるの背を撫でてやったら、えせるが居心地の悪そうな表情をして逃げた。
??
もう一度手を延ばす。
矢張り、少しの間は撫でられているけれど、暫くすると逃げる。
……まさか、忘れられたのか?!
アイオロスがやってきて、えせるの名を呼ぶ。えせるは喜んでアイオロスに走り寄り、気持ち良さげに撫でられている。
毎日食事の世話も掃除もしていたのに、忘れたのか? この私の匂いを!!
新鮮な草もくれなくても、アイオロスの方がいいのか??!
ちゃんとお土産も持って来たのに!!!!
唖然とその様を見守っていると、アイオロスが小気味よさげに笑った。
「えせるは、飯より何より、いっぱい撫でて愛してもらうのが何よりも好きだもんな♪ ほーんと、エセルそっくりだな♪」
そんな事はない、という私の主張はあっさり却下され、えせるに伸びていた手が私の方に伸びてきた。
食生活は全ての基本! ちゃんと野菜も食べなさい! といくら主張したところで、
結局この手に負けてしまう私は、やはりウサギと同レベルなのか……? (苦)
お前、イギリス人なんだよな?
イギリス人は「食」に関してのポリシーを持たないのがポリシーなんじゃないのか?
お抱えの料理人が食事の世話をしてくれる立場なら、勿論どんなものでも喜んで食べるけれどね?
栄養について気を配るのは彼等の仕事だ。私がとやかく言う事ではない。
でも、今は私が、その料理人と同じ立場なのだから、私がメニューについて煩く言うのは理にかなっているだろう。
それとも、お抱えの料理人を雇ってもらえるのかな?(にっこり)