ローションが無くなったから薬局に買いに行く、というので一緒に買い物に出たら、連れて行かれた先はBoth&Bodyとでかでかと看板が出てる店だった。
即効、回れ右をしたところを、短くなったにもかかわらず、がしっと髪の毛を掴まれて、にっこり一言。
「もう一つの買い物も本当だ。こっちの買い物が終わったら行くが、どうする?」
しょうがないので、一緒に店に入る。
中は明るい木目のフローリングで、細長い店内の入り口には大きな丸テーブルが据えてあり、お勧め品などを展示しているらしい……。
ぐちゃぐちゃになった臭いの強さに、頭が痛くなる。
そもそも、この手の店が嫌いなのは、人口臭い、強い香料の匂いと、分けのわからない自然の匂いを目指した匂いで、一つ一つの匂いがわからないくらい充満していて、立っていられなくなるからだ。
「なぁ、カミュ、オレ、外で待ってるから……」
睨まれて却下される。
そのうち、濃いグリーンと白と金色をメインの配色にした一角に来る。同じブランドのものらしい。
カミュはその中の一つのボトルを取ると、蓋を少し開けて鼻を近づける。
何度か色々匂い嗅いだ後、一つのボトルをこっちの顔に突きつけてくる。
……どうだと、言われても……(涙)。
お前が好きなウッド系だぞ?
と言われても、もう頭が痛くて、匂いを判別すること事態、脳が嫌がっているみたいなんだけど……?(涙)
言われたとおり、嗅いで見て、その匂いの強さに顔を背ける。
何度かそれを繰り返すうちに、
「あのな……これは、所謂原液の匂いなんだ。実際に使う時は掌に取る程度だし、ちゃんと泡立てて使えばお前が意識するほどの匂いではないし、洗い流して髪に残る量など微々たる物だ。それもちゃんと計算して答えろ?」
……計算してなんて答えられません……もう痛さが後頭部まで伝わって来てる(泣)
その後、なんでもカミュの好みでいいと頼み込んで、やっと決まる(カミュ、むっとしてたけど)。そして、ついでに、とカミュがバスオイルなどを選び出した時点で、ギブアップ。
外で待たしてもらうことにした。
例え車の排気ガス入りでも、外の空気って美味い!(感涙)
その後、軽く食料を買い足して、薬局に寄る。
棚に陳列してあるボトルや紙パッケージを見て、こないだ来た時と配列や商品が入れ替わっている事に気づいた。
「なあ、カミュ、こないだ使ったのってどっちだっけ? どっちのが気持ち良かった?」
すげっ! 思いっきり他人の振りされた!!
なんだよ! と思って側に行ったら、カミュはすたすたと薬局を出て、一言。
「お前に任せる」
なんなんだ??!!
さっきは散々人の好みを聞いて、匂いのテイスティングまでさせたくせに!
……帰宅してから気付く。
別に、深く詮索しなければ、他の誰か(彼女とか)相手に使った、と受け取られてもおかしくない台詞だったわけだ……(溜息)
咄嗟に思考が硬直して最善の策がとれなかった。反省。
(しかし、お前、自分が住んでいないからってあけすけすぎないか?!
私は結構あの薬局には寄るんだ!!)
カミュって、結構簡単に、すっぱりと人のこと無視したり、他人の振りしたりするよね……(恨)
女の子に使うなら恥ずかしくなくて、男相手に使うなら恥ずかしいのか??!
どっちもやってる事も、やる理由も一緒じゃないか……。
違うな。
同じ事をしても子供は出来ない(きっぱり)。
まあ、どこぞの家では、それでも無理矢理子供作ろうとして大変な事になっているようだが。
気がひけるのは、まあ、単純にヴィジュアルの問題かもな。
女の子が男に寄り添っているのはそれなりに可愛らしいけれど、身長六フィート超える男二人が裸で絡み合っている図はどう見ても美しくないだろう。客観的に見て。
そんなものを他人に想像させるような言動は慎め、とそういうことだ。
やってる事と、やる理由は一緒じゃないか。
カミュの言ってるのは結果が違うんだろ?!
大体、男二人がくっついて歩いてて、直ぐにその二人が裸で何かしてるって具体的に脳内で映像化できる人間って居るのかよ??
身長6フィート超える女の子だって珍しくないっ!
そんなの想像が出来るのは、カミュくらいだっ!!
言っておくが、、、
6フィート超える大女がゴロゴロしているのはお前の業界だけだ。
ついでに言えば、この場合問題は身長じゃなくて性別だ。まあ、その年でまだモデルやってられるようなお前に言っても無駄だとは思うが、華とか、そういうものが男と女とでは決定的に違うんだよ。
で、いい年して薬屋のあの一角でそんな話をして、そっちの方に気がいかないネンネもお前くらいだな。
まあ、昔からその方向には鈍かったし?
これも言っても分からんだろうが。
別にお前の恋愛論に口を挟む気はないが、公衆の場で周囲に居心地の悪い思いをさせるな、とそう言っているだけだ(私を含め)。
ネンネって……世間知らずってなんだよっ!
言っとくけど、シモネタならティンパニよりベースや管の方がよっぽどしてるんだからなっ!!
大体、直ぐに性別で何かを分けようっていう考え方がおかしいっ。
女の人にだって華の無い人はいるし、男にだって華のある奴はいる。
薬屋の一角で、ってあそはそういう商品を置いてるところなんだからレストランや飲み屋でそういう話するより場違いじゃないだろう?!
第一、居心地の悪い思いする人だけじゃないかもしれないじゃないか! 参考にする人だっているかもしれない!
お前のパートは、ベースじゃなくてヴァイオリン。
いつまでたっても覚えない奴だな。
サガ先輩が悲しむぞ?
ついでに、パーカッションは金管とひとくくりにされるから、その手のお前が意味分からなくて立ち往生したそうな話題の洗礼は受けてるんだよ。
総計5年間、1ヶ月でさっさとヴァイオリンに鞍替えしたお前よりは知識はあると思うが?
居心地の悪い思いなら、少なくとも一人は嫌というほど味わったが。
で、お前のいう「参考になった」という人間の数は、今のところ未確定。
信頼出来る数の差で、お前の意見は却下。
個人的に、減りの早いローションはやっぱりそれなりに使い勝手がいいのかな、と思うし、立ち話でそういう事いってたら、そうなのかな? ってオレなら参考にするけど?
と、食い下がった所で、これ以上その話を続けたいならそれでもいいが、少なくとも、『自分は』公共の場であけすけにこの手の話題を持ち出される事が不愉快なタイプの人間だ、『お前』と違って。
と、ぎりっと目を覗き込まれながら言われた。
ここで、話は終了。
カミュはシャワーを浴びに行った。
いっつも口で負かされてると思うのは……気のせいじゃない……(落込)
どうしたら勝てるだろう? と考えて、ふと、勝ちたいわけじゃない事に気付く。
ただ、すっぱり無視されたり、他人のふりされたりするのが嫌なだけなんだけれど、それを言うと、その原因は全部オレって事になるからなぁ……(嘆息)。
どうしたらいいんだろう……。