ここは、間違いなく大英帝国の地なのだけれど、うちに居る巨大なくまさんはアメリカ生まれのアメリカ育ちで,今年もこの時期になるとうきうきとカレンダーの日付を毎日確認している。
(笑)
熊、といったのはアイオロスの事なのだけれど、本当に、この時期からクリスマスが終わるまで、彼はそわそわしっぱなしだ。
12の歳までアメリカで育った彼の年間祭日スケジュールは、いっかなイギリス仕様には変換されず、しっかりとアメリカ式のままだ。
毎月、何かとイベントを楽しもうとする彼だけれど、今月はこれ、サンクス・ギビング・デーだ。
11月の第四木曜日と決まっていて、アメリカではこの週は民族大移動の大イベントなのだそうだ。
ここはイギリスで、当然イギリスにはサンクス・ギビングなどの習慣は無い。けれど、彼は毎年この日をわくわくしながら本当に楽しみにしている。
理由は……大手を振って大量の動物性タンパクを摂取出来るから、なんだろう……。
巨大なターキー(これはアイオロスがわざわざ市場に行って買って来る)にスタッフィングを詰めて(切り刻んだパン、セロリー、レーズン、栗、スープなどを混ぜたもの。ご家庭毎に違う)、5時間以上もかけてオーブンで焼く。
添え野菜としては、マッシュ・ポテト、マッシュ・スイート・ポテト、……とにかく芋類……。
パンは、コーンブレッドという、ぷつぷつした感触のよいパウンド・ケーキのようなもの。
それから、忘れてはならないのがクランベリー・ソースとグレービーソース。
多分、これより美味しい物は、世の中に沢山溢れていると思う。
ターキーは脂っ気のない、とてもパサパサした淡白な鶏肉だし、添え野菜がマッシュ・ポテトで、パンは口触りの良く無いアメリカ式のコーンブレッド。
それでも、毎年アイオロスはこれを食べたがる。
喜んで残さず食べてしまうからいいのだけれど(いや、たった二日であの量が消えるのは決して良く無い!)、時々(でもないか……)彼の胃袋の構造が気になる。
再来週にはモルディブに行くというのに、今週末には大量の食材を買い込まなくてはいけない。
日に日に日照時間は少なくなり、日の出も遅い。
毎日がどんよりと暗いまま、という事も少なく無い季節になって来たのに、彼だけはいつも陽気で賑やかだ。
そういう所は、本当に有り難いし、感謝しているし、尊敬も出来ると思う。
けれど、頼むからロス(うさぎ)のお腹を撫でながら「もう少し太らせないとな……」とか真顔で呟くのは止めてくれ……。
君が本気じゃないのは分かってる(信じていいんだよね?)けれど、時々目つきが怖いよ……。
だったら、肉の量をケチるな!
……来週、お腹一杯食べれるだろう?
楽しみに待っておいでよ……。