カミュ!! とうとう出ちゃったよ!!
『……何が?』
スーパーエナロット!! 一等 1億4780万ユーロ!!
『……ミロ?』
しかも、トスカーナ! めっちゃ地元じゃん!!
『トスカーナの州都は確かにフィレンツェだが、お前は今ラツィオ州ローマ県ローマに住んでるんじゃなかったのか?』
え? でも、地元はローマじゃないよ!
『……。』
2ユーロで1億4780万だよ? めちゃくちゃな勝率じない? 俺も最近はまめに買ってたのに!
『……買ってたのか……』
当たり前だろ?! 毎回カミュの分と合わせて二枚ずつ買ってたよ!
『……だからコンクールに集中しろって……』
それはそれ。これはこれ。お金は欲しいじゃないか。
『まあね……(溜息)で、その後練習ははかどってるのか?』
へ? あ、ぁあ!! うん。ちゃんとやってる! ご飯も食べてる。
『まあ、流石にお前も、少しは体調管理という言葉を覚えたか……本選のファイナルは聴きにいってやるから、ちゃんとそこまでは行けよ。』
えっ!? あ、やっぱり聞きに来る? 仕事は平気なの?
『ちゃんと開けておいてやる(笑)』
……(ぐっ)。ガンバリマス……。
『なんか嫌そうだな。』
あ、いや、そうじやなく……。まあ、その、俺も人並みには、好きな人の前でとちったりしたら恥ずかしくは思うわけで……いや、まあ、ヘマしなきゃいいだけなんだけど……。
『……お前、本選でヘマしたら間違いなく入賞は無理だぞ……』
あれ? あーうん。そうだよね。いや、だからまあ、いつもとちらなきゃいいわけだから、まあ、はい、頑張ります。
『是非そうしてくれ。でないと、一週間練習に付き合った甲斐がないからな(笑)』
うーん……一週間練習に付き合ってもらった対価が入賞って、高いよなぁ……(笑)
『そう?』
いやー、相場考えたら高いだろ。
『バカンス中は人件費は高いものだろう。』
イギリスにはバカンス無いって散々言い張ったくせに!!
『イギリスにないんじゃなくて、お前にないんだ。』
?????
『お前には夏休みは必要ないってこと。』
なにバカな事言ってんだよ! 人間であるかぎり、バカンスは基本的人権要項だ。
『悪いが、今の言葉は私のオリジナルじゃない。お前の師匠のミズ・エヴァンズの言葉だ。』
げっ!! 会ったのか??!!
『言われてたじゃないか、パブリックの頃。散々。ま、今会っても同じ事を言うと思うけどね。』
焦らすなよ……、もう。そんな十年も前に夏休みを否定されて、今も否定されたら人生不幸のどん底じゃないか。
『いや、今も十分否定されていると思うが。師匠にも練習しとけって言われたんだろう?』
言われたが、師匠はバカンスに行った。もう帰ってきたけど。練習しとけっていうのとバカンスが無いのとは全く別の話だよ。
『……あのな……お前の師匠がコンクールに出るわけじゃないんだ、師匠と比べてどうする。』
だからカミュと一緒に練習したじゃないか……。一緒に宝くじに外れた悔しさを味わおうと思ったのに……。
『……いや、そんな一億五千万ユーロとか言われても、実感湧かないし。』
そうだよなぁ。俺も見当もつかない(笑)。でも、とりあえずサガへの借金は返せるし、カミュと自分に航空券は沢山買えるじゃん?
『そうか……お前、まだ借金が随分あったんだな……だったら、そんな大物狙わないで、まめに回数買った方がいいんじゃないのか。』
いや、結構忘れるんだよ。今回はみんな騒いでたから買えたけど。一人で飲みになんか行かないし。それに、借金って、ちゃんとコツコツ返してるから心配しないでいいからね。
『ちゃんと返してるのは知っているが、金額が金額だからな……。しかし、お前、あのヴァイオリン買い取って、お前が年をとって弾けなくなったらどうするんだ? 遺産相続させる子供もいない(できない)し。』
うわぁお!! カミュ、一生俺と一緒に居てくれるつもりなんだ!! 楽器は子供に譲らなくても、本当に弾きたい人に弾いてもらえればいいんじゃないのかな? 俺だってそうやってサガに譲ってもらったんだし。
『……別れたって他の人とは一緒にはならないと言ったのはお前だろう……
いや、サガ先輩のご実家なら代々管理してくれるだろうが、我々が他界した後はだれも管理する人がいない、ということなんだが。』
覚えてるんだ(笑)。
音楽がある限り、演奏者だって存在し続けるんだから、俺が満足にあの楽器を弾けなくなったらきちんとしたところに預けて誰かの役にたってもらうよ。
そしたら俺は、またあのジジの楽器でも弾くさ。
『あの楽器、まだ使えるんだ……!』
失礼だな!! 薪になった訳でも穴が開いたわけでもないんだから使えるよ。
ただ単に、ハードワークには付いてこれないだけで。俺がよぼよぼになったら丁度いいよ。
『ま、その前に飛行機事故に遭わないよう、日頃から素行はよくしておけよ。』
昔はバイオリンは飛行機と一緒にクラッシュしてしまう事が多かったんだけどね。演奏家と一緒に。さすが最近はそんな事滅多にないけど。
素行の良さと飛行機事故と関連があるのかわからないけど、取り合えず九月のコンクールは地元のイタリアだから飛行機には乗らないよ。カミュの方こそ気をつけてな。カミュがそんな事でいなくなったらたまらないからな。
『神様にお願いしておこう(笑)。それじゃ、もう遅いから。そろそろお休み。』
うん。お休み。本当に、飛行機に乗る前はよくお願いしてね。それでね変な感じがしたら絶対に乗るなよ?
『……そんな、お前じゃあるまいし、そんなに勘は働かないよ。でも、まあ、そこそこ実績のある航空会社にしておくか。』
ほんとに、ほんとに、事故だけは勘弁してくれよ? 勘なんて普段働かなくてもいいんだから、その時だけはしっかりな?! じゃなきゃ、もう飛行機には乗るな!
『そんな無茶な……って、お前、すっかり目が冴えてるだろう……夜中に変な夢みて飛び起きないよう、ちゃんと水飲んで、ストレッチして、余計なこと考えないで寝ろよ? でないと明日辛いから。』
うーん……実はもうかなり眠いから大丈夫。それより、絶対に飛行機事故になんか遭わないでな……
『わかったわかった。』
絶対だからな。
『わかったから。もう寝ろ。なんなら子守唄でも歌ってやろうか?』
うん。いいなあ、それ。
『馬鹿、間に受けるな。そこでどうやって寝るんだ。』
パソコンもって移動するよ。ほんとに歌ってよ。責任とって。
『まったくもう……。笑うなよ。
Dodo, l’enfant do,
L’enfant dormira bien vite
Dodo, l’enfant do
L’enfant dormira bientôt.
Une poule blanche
Est là dans la grange.
Qui va faire un petit coco
Pour l’enfant qui va fair’ dodo.
Dodo, l’enfant do,
L’enfant dormira bien vite
Dodo, l’enfant do
L’enfant dormira bientôt.
Tout le monde est sage
Dans le voisinage
Il est l’heure d’aller dormir
Le sommeil va bientôt venir. 』
…Bravo…!
後で歌詞の意味教えてね……
I love you so much……zzz…
『I love you too…. have a nice dream….』