ロスがペレットを完食した!
昨夜、無理矢理給餌をされなかった事に気を良くしたのか、ロスが漸くペレットに口をつけた。
ただ、ペレットを食べるのが遅れた理由は、他にもあったようだ。
実は、家では二種類のペレットを併用している。ひとつはロスを買って来たラビットショップから直接買っているもので、市販のものより固いが、香りは良い。もう一つはペットショップで売っている市販のペレットだ。一応、両方味見してみたが(草だから人間が食べても問題はないだろう)、人間の舌でも明らかにラビットショップのもののほうが香りがよく、草の苦みも甘みもすっきりしている。市販のものは、どうも混ぜものの複雑な味がする。
(アイオロスは私がペレットを齧ったと知って、とうとう本物のウサギになったか、と失礼な事を言っていたが)
どちらもチモシーベースだが、ロスを含め我が家のウサギはいずれもラビットショップのペレットが大好きで、混ぜて与えてもまず最初にそちらから拾って食べるほどだった。
ただ、経験上、同量与えても、ラビットショップのものを与えた方が太るのが早い事がわかっていて、沢山は与えてやれない。ほんの5グラムほどのペレット(数えられるほどの数しかない)を一瞬で食べ尽くし、悲しそうにこちらを見上げるの見るのが不憫で、より脂質とタンパク質の量を抑えてある市販のものと混ぜて与えざるを得なかったのだ。
そんなわけで、弱って食欲のないロスが、市販のペレットを食べるはずがない、と思っていた。太る事を心配する必要もないから、ずっとラビットショップの餌ばかり与えていたのだ。
ところが、本日、アイオロスが他のウサギ達に餌を与えているのを見て、ロスが物欲しそうにその様子を見詰めているのに気付いた。ケージの中には、まだ昨夜与えたラビットショップのペレットが残っている。それでも、アイオロスはペレット用のスコップに残っていた市販のペレットをロスのケージに入れてやった。(何のかんの言っても、アイオロスは矢張り世話好きだ、と確信。)
そうしたら、喜んでそれを食べたのだ!
それで、はっとした。
我々はウサギが弱ると、大慌てで高栄養のものを採らせようとする。勿論、それが必要な場面もあるのだろうが、ウサギが自分で食べるものを選べる状態になると、彼等はまず最も栄養の低い(というよりほとんどない)牧草から口をつける。
以前えせるの避妊手術をした時もそうだった。初日は痛みのため何も食べられず、二日目、漸く動き出したえせるはペレットには見向きもせず草を食べた。しかも、もっとも栄養がなさそうに見える、枯れた茎のところばかりだ。
それから更に翌日には、もう少し栄養のある葉の部分を食べ始め、徐々にペレットも食べ始めた。不思議に思ったが、それが彼等の体の構造にかなう事なのだろうと、好きにさせておいた。
そこから類推すれば、おそらく、ラビットショップの餌は、まだ今のロスにはタンパク質や脂質が高すぎるのだ……
そして更に考えれば、一昨日、ロスがあれほど強制給餌を嫌がった理由も納得出来る。強制給餌用の粉末は勿論栄養強化されているから、タンパク質も脂質も多い。一番弱っていた時は、それでも食べた。必要だと分かっていたから食べたのだろう。でも、回復してきたら、それが負担になってきたということだ。
改めて、ウサギの知恵(?)に感服した。
彼等はそれらの餌のタンパク質の量など知らないだろうが、本能的に、今自分に必要なものを知っている。知識に振り回される人間と比べ、なんと敏感で効率的であることか、と。
今、ロスはコーヒーテーブルの下の木材を齧っている。麻痺していた(ように見える)顔面左側のリハビリなのか、木を食べたい気分なのかは分からないが、好きなようにさせている。木にも栄養は殆どない(あっても吸収できない)だろうから、これも回復までの一過程なのかも知れない。
ところで、ロスに私達の注意が集中していたこの一週間、えせるは大層不満を溜め込んだようで、本日午後はひたすら蹲り沈鬱な表情をしていた。慌ててえせるのご機嫌をとり、半日かけて、漸くお腹を触らせてもらえるようになった。右鳩尾に固い突起があり、嫌な予感に襲われる。しかも、心臓鼓動とともに脈打っているようだ……
えせるは子宮をとってしまっているので、その分内蔵が全部下に下がって心臓に触れているのか、と馬鹿な事も考えたが、流石にそれはないだろう、と結論。どちらかというと、動脈に触れている感触に近い。
動脈瘤だったら…と、また胃が傷んだが、そうであったなら尚更病院には頼れない。これ以上えせるの体に傷をつけては、体力を落とすだけだ。
とにかく、ひたすら其処に愉気を続けている間に、しこりそのものはなくならないものの、嫌な感じの強張りは解けて来た。もともと、えせるは気の感応が早い。暫くすると、水を飲みに行き、また戻って来て撫でてくれと鼻を私の手にすりつけてきた。再び同じ場所に愉気。そして、また暫くして、水を飲みに行く。また愉気………。
4回ほどそれを繰り返した後、えせるはもう私の元へは戻って来ず、遊び始めた。ここ数日妙に気が立っていて、小さな物音でもすぐに緊張していたのだが、あれは体調が思わしくなかった所為だったのかも知れない。何度も撫でてくれとすり寄ってきていたのに、ロスの事で手一杯で、あまり構ってやれなかった。そのことも、きっと鬱屈の原因だったのだろう。
妊娠疑惑のあるプチだけは、外にも出してもらえず(何処に巣を作るかわからないからだ)閉じ込められたままなのに、一人きらきらと輝いた瞳をしている。両親二匹が不調の中、一日中草を食べ、水を飲み、季節の変化などものともしない。はちきれるような体躯とその瞳の輝きに若さを思う。何となく、こちらの気も癒されてしまうから、若さというのは偉大だ。
その気の和みが通じたのか、あれほど触られるのを嫌がっていたプチが、最近私には頭を撫でさせてくれるようになった。アイオロスは相変わらず「雑巾ウサギ」などと呼んでいるが、こうしてみると、矢張り両親似の可愛い顔をしている、と思う。跳ねっ返りなのは、成程、確かにえせるではなくロスに似たようだが……
このまま、ロスが完全復帰するまで、夏の到来はもう少し待ってくれ、と祈る。
週間予報では、来週は冬が逆戻りしたような気候になりそうだ(最高気温が0℃の日もある)。
あと一週間安定してくれれば、次の真夏日は多分乗り切れるだろう。そういう意味では、ロスは色々と運に恵まれているようだ。
「アイオロス」と命名したお陰で、色々なところで人間のロスに似て来てしまって困ったものだと思っていたが、アイオロスの強運も受け継いでくれたのなら、やはりこの命名は正解だったと言う事か(笑)。