明日から少しの間、スチールの仕事があるのでイギリスに飛ぶ。
夕方にロンドンに着くと、あちらこちらにOcean13、Piratesの広告・旗が目立つ。
チューブを乗り継いで、カミュのアパートに行って呼び鈴を押してから「通訳の宅配です」と言ったら呆れられた。
荷物は確かに届いていたけれど、丁度街中で見かけた映画の広告の話をしたら、それなら折角だから何か見に行こうか、という事になり、ウェスト・ロンドンへ足を伸ばした。
ピカデリー・サーカスとレスター・スクエアの間は劇場やフィルムがたくさん、チャイナ・タウンがあってトロカデロもある。夜遅くまでわりと明るい。
幾つか候補はあったものの、結局Leicester SqのODEONでパイレーツ3を見る事になった。
(以下ネタバレ)
3時間近くあるこの話、最初は大爆笑だった。幾分前回よりシュールさが増し、やっぱり12Aだけあって目を逸らすシーンもあったけれど、砂漠という大海原を行く船長と船には本当に笑った。
(カミュに叩かれた)
思い返せば、きっとここでみんなに出会えて大団円で話は終わったのに……。
それから後は……もう……。話が転がり落ちていった……。
だって、10年に一度って、何??!!
そんなの、あと4回、いいとこ5回しか会えないじゃないか?!
てか、なんであそこで死ぬかな……結局あれって、ミス・スワンより父親を選んだってことか?!!(まあ、違うけど……違うところが情けないというか……溜息)
あまりにもがっかりしていたら、カミュはさらに追い討ちを掛けてきた。
「再婚するんじゃないか? 船長と」
……なんでそういう事言うかな……(がっくり)
そしたら、10年たって、やっと出てきたと思ったら、一応会いに来てはくれるけれど、再婚してるんだ……。いや、そりゃ、あの当時、女性一人が子供を抱えて生きていくのはそれは大変な事だと思うけれど……。
でも、6回目とか7回目とかには、確実に彼女はもう居ないわけで、どうするんだろう……?(涙)
あの場合、自分の心臓を自分で刺しても、やっぱり自分がまた船長になってしまうんだろうか?
ミス・スワンが死ぬ間際に刺してくれても、彼女がさまよえるオランダ船の船長になってしまうのだから、それは避けたいし……(苦)
カミュに言わせると、あれはハッピー・エンドの領域に入る物語だそうで(なんでだ?!) キース・リチャーズのギターもぶっ飛んだ。
がっくりして言葉も出ない、という感想は、騙されて見たマッチ・ポイント以来(苦)
これって、ディズニーの映画じゃなかったのか?!
と拳を握ってみても、もう見てしまったからどうしょうもない…。
なまじ、ミス・スワンの設定がカミュに似ているからなんだか余計にすっきりしない……。(カミュの方が美人だけれど)
なにがあっても、しっかりしてるから一人でちゃんと生きていけるし、またそれを生きる目標にしているよな……(絶対オレはカミュより後に死にたくないけど…)
思わず夜に、「結婚してくれる?」と聞いたら、
「彼らは結婚して直ぐに分かれたな」と、即答。
………。
もうね、カミュのそういう所は本当に凄く尊敬できるし、しているんだけど……。
なんか、三作かけてあの結末っていうのは哀れだったなぁ……(泣)。
だから、映画だというのに。(苦笑)
まあ、ディズニーだし、お伽話風に閉めるつもりだろうと思ってはいたが、ある意味ものすごくお伽話風な終わり方じゃないか。
悪くはないと思うが?
大体、ウィル・ターナーは1の最後でも彼女よりジャック・スパロウを選んでいるからな。
惚れたのなんのと言う割には、あの男無分別だぞ。
第一、自分が養ってやれないのに子供作る奴があるか。
もっとも、そういう男に惚れる方にも責任はあるが。
ところで、お前散々人をエリザベスに重ねておいて(失礼な奴だ)、自分はウィル・ターナーではないと言っているが、その割には随分感情移入しているようだな?(笑)
ジャック・スパロウがアイオロス先輩だというのは100%賛成するが。
まあしかし、もしお前が彷徨えるオランダ人船長になったら、十年に一度会いにいってやるよ。ヴァイオリン持って。
海の中じゃ、まともに楽器は鳴らないだろうから(笑)。
……カミュ、そういうのって、と「どめを刺す」って言わないか?(涙)
それで、もしオレが鍛冶屋だったら言うわけだ、
「この中に、大切なバイオリンが入っている。大事にしてくれ」
って。
うっわー。最悪だ!
一見御伽噺風だからこそ、裏にあるものが恐いじゃないか……ああいう御伽噺の裏にはオブラートに包んだもっと恐い真実がある……。
いや、カミュは、というか、ミス・スワンはカミュに似ていると思うよ。顔じゃなくて(怒ると目の感じは似ていると思うけど)、あのキッパリした所とか、環境に順応出来る柔軟さやきちんと計算して動けるところとか。褒めてるんだよ?
オレは……、鍛冶屋に似てるってのは絶対イヤだ……あいつ、ミス・スワンの足手まといにしかなっていないじゃないか……。それに、確かに無分別だし……。
うん。
もしオレが鍛冶屋だったら、1のラストで自分だけで行こうとしないで、カミュを誘うよ。カミュの方がオレより計画立てるの巧いし、残していって誰かに取られたら……やっぱり一生心残りだから。
危険だろうけれど、もしカミュが一緒に来てくれたら、絶対に守るし、自分も死なないようにするよ。
失礼な。
俺はあん妄想癖はないし、自分の船をそう何度も持っていかれたりしない。
六月の頭に、カノンも連れて見に行ったが、まあ人畜無害な終わり方だったんじゃないのか? あれは。
それにしても、エリザベスの子供がウィル・ターナーの子供だとお前達二人とも考えているようだが、分からんぞ?(鼻歌)
はいはい。
わかったから、もう寝なさい。
ところで、彷徨えるオランダ人の本来の伝説は、嵐の海で神に毒づいたオランダ人船長が永遠に海を彷徨うことになる話だったと思うが、十年に一度上陸して、というのはむしろワーグナーのオペラからの着想に思える。
ワーグナーの方は、7年に一度陸に上がって、その日に永遠の愛を捧げてくれる女性に出会えたら呪いがとける、というものだが、呪いが解ける、というのは彷徨う旅が終わる、ということで、つまり死ぬという事だ。
つまり、(ワグナーのオペラの通り)あれが本当にさまよえるオランダ人の伝説そのものであれば、十年後彼等が出会った時は、ウィル・ターナーが本当に死ぬ時だということになるんだが……
まあ、そこまでブラックな終わり方じゃなくて、よかったじゃないか。
ところで、まさかお前から私を守るなんて言葉を聞くとは思わなかったよ。
パブリック時代を通して、お前を色々な面倒から守っていたのは、むしろ私の方だと思うんだがな?(笑)
ロス、そういう茶々はやめなさいと……(溜息)
(しかし、女性であれば、一日でも子供が作れるんだな……(暗))
……………。
なあ……、オレ、なんか悪い事した? お前に(涙)。
なんかあったなら、はっきり言って欲しいんだけど……?
これでも、パブリックの頃から守ろうとはしてたんだっ!
特に、第4学年以降は……。
ただ、確かにずっとカミュには面倒をかけたというか、色々庇ってもらっていたから、そこら辺はパブリックの頃からちゃんと分かっていたし、だからなんとか返そうとしてたんだ。結果そう見えなくても。
そんなにオレ、カミュを矢面に立たせて平気な顔してる??(涙)
エセル、そう落ち込むな。
だから言ってるだろう?
一回じゃないと。
あんなのチャンスから言ったら、1で無人島に二人きりの時から、間抜けな鍛冶屋がイカ船長に捕まってた時から、もう、何度もしてるって♪
妊娠は確率だからな、大丈夫、ちゃんと毎日してればちゃんと妊娠するよ♪
いや?
というか、そんなに簡単に矢面に立つようなヘマはしていないつもりだが。
とにかく、いつまでも落ち込んでないで、さっさと寝れば明日には忘れるって。
お前、あしたスチールの撮影があるんだろう?
寝不足だと写真映りが悪くなるぞ。
お前、怖い話とか悲しい話とか聞くといつまでも寝ないからな……(溜息)
まあ、空想の世界で「もしも」の話を色々考えるのも結構だが、ほどほどにしとけよ?
現実は、今目前にある通りなんだから。
(黙考)
空想の世界は程ほど、現実を見る。
現実は、明日。
それから、目の前の事。
……。
カミュが居る。
多分、どこにも行かない。
(沈思)
目の前に、ミス・スワンと鍛冶屋の世界じゃなくて、カミュと普通の世界があるって事?
(沈黙)
あのさ、カミュって明日の予定どうなってる?
昨日電話で話した時は、特に商談とか入ってなかったよね?
(無言)
やってもいい?
……いちいち聞くな! (赤面)
(ミロが来る日の次の日の午前は、一応毎回予定あけてあるんだけどね……(脱力))
ただし、お前の肌に響かない程度で止めるから、途中でゴネるんじゃないぞ。
だって、カミュがとっとと寝ろって言うから……。
(黙考)
もしかして、
そうやって、カミュの言うところの空想の世界でぐるぐるしてるとカミュって妬く?
(沈黙)
あ、違うか。
ごめん。
失礼なんだっけ。
……。
ごめんなさい。
だから、そのツンドラ気候的な視線で人を刺すの止めて……(苦)