Thanksgiving(という習慣は英国にはないが)が明けて土曜日。
モルディブに向けて出発したサガ先輩とアイオロス先輩の留守中のウサギの世話をしに、サザークへやって来た。
便箋五枚に及ぶインストラクションを片手に、トイレを掃除し、草を詰め替え、水入れを洗って水をきれいにし、ペレットを規定量皿に入れた。
これ……二匹分同じ皿に入れて良いのかな??
特に分けろとは書いていないので、エクササイズ・パンの中にあった皿にペレットをいれてやると、もの凄い勢いで奪い合いが始まった……。
体の小さいえせるの方が圧倒的に不利かと思いきや、体ごと皿の上に乗り出して(ウサギの)アイオロスの口が届かないように邪魔をしている。いずれ力で競り負けてどかされてしまうのだろうが、結構したたかだ。
メモに書いてあった量のペレットはあっという間に消失し、(ウサギの)アイオロスが後ろ足立ちになって足に縋り、お代わりを強請ってきた。
ええと……(汗)。プチの三倍はあろうかという体だから、少しくらいは多めにあげても大丈夫なのかな??
頭を撫でると食後だというのに耳が冷たい。何か注意書きはないかと便箋を捲ると、「あまりお腹をすかせているようなら少し多めに」と添え書きがしてあった。
まあ、飢えさせるよりは、少々太るくらいの方が良いだろうが。
それにしても、それほどお腹が空いていると見えるのに、山と摘んである牧草には見向きもしないあたり、矢張りこのウサギは命名を誤ったに違いない。
便箋の五枚目は、すっかり骨と皮ばかりになってしまった七面鳥についての詫びが、サガ先輩の几帳面な字で本当に申し訳なさそうに綴られていた。
あのアイオロス先輩が居るのに肉の欠片でも残っている筈がないと最初から読んでいたので、全く期待もしていなかったのだが、冷蔵庫を開けて暫し唖然。
……ここまで骨しか残っていないなら、もう処分した方が良いのでは??
トリガラの横には、詰め切れなかったスタッフィングと、クランベリーソースの残り。先輩が戻って来るのは一週間後だから、クランベリーソースはともかくスタッフィングは加熱して食べてしまった方が良いだろう。
スープの鍋にトリガラを放り込んで加熱し、スタッフィングはオムレツの中に押し込んで軽い夕食を取る。サガ先輩の実家のレシピと同じだそうなスタッフィングは、ターキーの汁がしみ込んでいなくても十分に美味しかった。
と、木曜日のアイオロス先輩の言葉を思い出した。
「昔はエセルは、ターキー・ポンペイ風が得意だったんだ♪」
そういえば聞きそびれたが……ターキー・ポンペイ風って、ナポリ料理の一種か??