夏の間2週間ほど、丁度ロスの出張と私の出張が重なって家を空けた。
いつもはこういう時、カミュにウサギ達の世話をお願いしていたのだけれど、今年は彼は音大の入学準備で忙しいので、アイオリア一家とHRSのGeorgeとSueに世話を頼んだ。
(猛練習の甲斐あって、カミュは無事音大に合格したらしい。正直、流石の彼でも難しいだろうと思っていたけれど……本当によかった。)
カミュはうちのウサギ達にも慣れているので、体調の悪いときには一目見れば分かるだろうけれど、アイオリア達にウサギの調子が悪いときの様子を伝えるのが難しい。
普段体調の良い時の糞のサンプルがあれば、体調を崩したときに分かりやすいだろう、と、二匹のウサギ達の糞を小さなビニール袋に入れて、アイオリアとGeorgeに預けて出かけた。
二週間後、空になった牧草を買いにHRSへ行き、Sueに呼び止められた。
「ちょっと見せるものがあるから、待って!」
何かと思えば、出張前に渡した糞の袋だった。
「これ。Mango (アイオロスはうちに引き取られるまで、HRSでMangoと呼ばれていた)の糞だけ、黴が生えてるでしょ? これは、お腹に雑菌(Fungus)が多いということで、こういう子はお腹の具合が悪くなったり気分が悪くなったりする事が多いから、病院でお薬をもらってきた方がいいわよ。正常なウサギの糞には、こんな風に黴は生えないの。Mangoはブリーダーが飼育放棄して劣悪な環境にいたことがあるから、そのときから菌を持っていたのかもね」
Mango改め(ウサギの)ロスが我が家に来てからもう2年以上経つというのに、そんな事には全く気付かなかった。確かに突発的に腸の動きが悪くなったりしていたが、もともと牧草をあまり食べないので、そのせいだとばかり思っていたのだ。(いや、牧草が嫌いなのは生来の性格かもしれないが……(汗))
「HRSで15年ウサギを見ていても、まだ新しい発見があるわね。これはいい健康チェックの手段になるわ」
Sueはその糞の袋を楽しそうに掲げて、「授業の資料にするから」と笑った。
多分、次号あたりのHRS会報に写真入りで掲載されてしまうのだろう。
トイレを共用しているえせるが保菌していなかったことがせめてもの幸いだけれど……
ロス、君は3年もFungusをお腹に抱えていたのかい?!
そして、その菌の生えた糞が獣医学部の学生さんの目に晒されるのかと思うと……
……まあ、役に立つなら嬉しいけれど、少々恥ずかしい気もするよ……。
(人間の)アイオロスは、Fungusと聞いた途端顔を顰め、家に戻ってから立ち上がっておやつをねだる(うさぎの)ロスに何事か呟いていた。聞くと心臓に悪いので、最近この手の呟きは聞かないことにしている。
幸い、急を要するようなものではないけれど、高齢のえせるに移ったら困るので、今週末に診察を予約。HRSが推薦するウサギに詳しい先生に診てもらえる事になった。
そういえば、カミュのところに行ったプチは大丈夫だろうか?
短い間とはいえ、結構近くに居たし……
……それを口実に、電話でもして、少し近況を聞いてみようかな?