My Dearest Lady

早いもので、えせるが姿を消してから一週間以上が経った。


不思議なものだ。
つい10日ほど前までは、撫でてやったり、声をかけてやったりしていたものが、その存在を全く失ってしまっている。
丁度十日前の夜も明けない頃、車であの小さな体を運んで始めて向かう救急病院を探しあぐねた。
入院の間に、新しいえせるのベッドを大工仕事と縫製作業で完璧に仕上げ、看病の為に大々的に部屋の模様替えをし、HRSのジョージらの所に作戦会議に出かけ、そして14時間後に我が家に連れ帰った。
暗い夜道、薬と朦朧としているえせるに誤りつつ、えせる用の果物やスポーツドリンク、酔い止め薬を購入して帰宅。
発症から17時間後の午後10時には、自分からシリンジに吸い付いてくる食欲を見せたえせるだったが、それから7時間後、心臓は止まった。
それは、最初にうちにやってきたぷちえせると同じように、苦しんで死んだ発作だったが、何かその後に襲われたぽっかりとした感が、全く前者と異なる。
6年もの長い間一緒に暮らしてきた命だが、奇妙な程彼女の痕跡は濁りが無く、通り過ぎてしまっている。
今もその小さな体はいとおしく、仕草や体温が懐かしいが、こちらのそんな些細な感傷など吹き飛ばすようにえせるは潔く踏ん切りをつけてしまった。
うなりながら、なかなか見事、と言う他ない。
人間でもああも清々と自分の人生に幕を下ろせる奴は居ないだろう。
天晴れだ。
少々気が早いと思わないわけでもないが、お前は食事や何かに対応する時にはいつもフライング気味だったものな。仕方が無いな。
全く、最後にしてやられた。
とびきりに、最高にいい女だったぞ、お前。

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