明日は、thanksgiving dayだ。
……英国にはthanksgivingはない、と言ってはいけない。
明日一日は(も?)、このロンドン・サザークの小さな私達のアパートは、星条旗で溢れかえる。
thanksgivingといえば、ターキーの丸焼きで、ロスはこれをお腹いっぱい食べるのをとても楽しみにしている。
いつもは、市場の肉屋に予め予約をいれて、まるごと一羽分を譲ってもらえるように頼んでおくのだけれど、今年は学会がたてこんでいて、何週間か続けて市場に行けなかったので、注文が出来なかった。
とはいえ、大きなグロッサリーストアに行けば、冷凍のホール・ターキーは手に入る、と事前にカミュから聞いていた。
やはり、ロスみたいな人もロンドンには居るらしい。
この時期thanksgivingを祝おうとする人達のために、いつもより多く冷凍肉を仕入れているはずだから、予約しなくても簡単に買えますよ、とカミュは言っていた。
肉屋に並んでいるものも、冷凍ものを解凍したものがほとんどだから、今年はこれですませることにしよう。
そう決めて、本日は研究室を早退し、車でグロッサリーへ向かった(ターキーは10kg以上あるので、手でぶらさげてはなかなか運べない)。
一軒目。
ターキーの姿はない。精肉コーナーの隣に、溶かしたターキーを置いてあったと思われる1平方ヤードほどの空のコンテナを発見。
どうしよう……(汗)
ここ一ヶ月ほど、「thanksgivingにターキーを買うから」と、食卓の肉料理を随分制限してきたのに……
今更、なかった、とはとても言えない。
肉の品質は、(市場をのぞけば)ここが一番良かったのだけれど、少し足を伸ばして、遠くのグロッサリーストアにも寄ることにする。
生のクランベリーも売ってはいたけれど、輸入だとしてもかなり値が張るので、安売りだったセロリとパセリだけ買って別のグロッサリーストアへ向かうことにした。
二軒目。
ようやく冷凍ターキーを見つける。
しかし、1平方ヤードのコンテナの中には、残り5羽ほどしか残っていなかった……。
値段は、1lbs(ポンド)あたり0.99ポンド。安い!
去年までは、その倍の値段の鳥を買っていた。
味の違いがアイオロスにわかってしまうのではないかと思ったけれど、それしかないから仕方がない。
(まあ、50ポンドの出費を覚悟していたから、助かるといえば助かるのだけれど……)
あとは、クランベリーソースを作るためのクランベリーを探す。ソースにするのだから、冷凍でもよいのだけれど、この時期なら生のクランベリーを売っているかもしれない。
はたして、林檎の山の横に生クランベリーの棚が出来ていて、2袋2ポンドというリーズナブルな値札がついていたけれど、これもなんと、完売していた………。
……実は、意外に多いのか?! thanksgiving 組……
仕方なく三軒目へ。
ようやく、生のクランベリーを入手する。
ここでも、1ヤードの鳥コンテナが二つもある。
一週間前来たときに、山になっていたコンテナは、二つとも底が見え始めていた。
………。
いったい、どれだけいるんだろう、thanksgiving組……
レジに並ぶと、若い青年が、彼女と思われる女性と一緒に、ターキーを買っていた。
家に戻ると、どこか子羊を思わせるウサギのAngel(HRSから借りている、ウサギのロスのお見合い相手)が、つぶらな瞳でこちらを見上げていた。
子羊……は、イースターが受難の季節だけれど……
この時期は、ターキー受難の季節か。
ミロから教わった合掌でターキーを弔って、シンクに置いた。
サガ様!!!
スーパーの安売りで1lbs 0.99ポンドのターキーとは……(涙)
ご連絡くだされば、わたくしの実家から特別に太らせたものを送らせましたのに……(涙)
アレックス、
お気使いありがとう。
でも、私はもうあの家を出た身だから、これでいいんだよ。
時々、スティーヴの作ってくれた美味しいターキーが恋しくなるけれど……。
そうだ、私も随分料理がうまくなったから、一度スティーヴと一緒に食事にでもこないか?
あ、ターキーの丸焼き?
それ、俺もいく。
そうだよな。thanksgivingだもんな。
アレックス、お前も来いよ?
サガ、そういうわけだから、メシ用意しとけよ。
では、シェフも連れてまいります!
サガ様にはごゆっくりお寛ぎいただいて、料理は私どもが!!!
いや、それじゃおもてなしにならないじゃないか(笑)
大したものは作れないけれど、皆でおいで。
久しぶりに会えるのは嬉しいよ。
お前ら、
俺のいないところで何盛り上がってんだ、コラ。
カノン、来るならてめえの肉は自分持ちだ。
わかってんだろうな。
ケーキとか酒とかで誤摩化すんじゃねえぞ。
……なんか、みんな楽しそうでいいね……(溜息)
本当にみんな、カミュが何処に居るのか知らない??
溜息。