グロッサリーストアの表示では、10時間で解凍する、と書いてあったのに……(呆然)
只今、午前六時。
昨日シンクに置いておいたターキーが気になって、起きて様子を見に来たら、ターキーはまだ中央がしっかり凍っていた……。
お腹の中に、首の部分と内蔵が袋に入って詰められているのだけれど、しっかり凍っていて引っ張っても取れない。
なんとかお湯をかけて、首と内蔵の袋は取り出したけれど、ここまで固く凍っていると、本日3時のカノン達の来訪に間に合わない!
水をかけて解凍を早めようと、コンテナの準備をしていたら、その物音でアイオロスが起きてきた。
「あーあ、やっぱり凍ってるのか」
「うん……ごめん……。ストアでは、10時間で解凍すると書いてあったのだけれど……」
「あのな? ターキーは一日前から塩水につけて解凍するんだぞ?」
「えっ……そうなのかい?」
「ブラインド、っていってな。ブイヨンや野菜、ハーブを入れた塩水に入れておくと、肉が水吸ってパサつかなくなるんだ。ついでに、味もつくしな」
それから、アイオロスは冷蔵庫を開けてレモン、タマネギ、キャロット、ガーリック、セロリを取り出してざくざくと切り、私の用意したコンテナに入れてその上から熱湯をかけた。
「エセル、塩とって」
「普通の塩でいいのかい?」
「いいけど、それじゃ全然足りんな。袋で」
1lbsほどの塩、砂糖もその半分くらいを入れて、それから粉末のスープストックをテーブルスプーンに4杯くらい入れ、水をコンテナの半分くらいまで入れる。
それから、ターキーをそのコンテナに沈め、更に上まで水を張って、乾燥ローズマリー、タイム、ローリエなどを入れた。
「ほんとは、これで一晩だが、まあ、6時間もおけばいいだろ。12時に焼き始めれば、3時間で焼ける」
「えっ……? このターキー、20 lbs超えているよ? 本当に3時間でいいのかい?」
「腹につめものをすると時間がかかるが、空で焼けばそれでいける。つめものは、別に作ってパンに落ちた肉汁を吸わせるんだ。肉の味は、つめものナシで焼いた方が旨いぞ? 肉は、時間をかけて焼くほど水分が飛ぶからな」
「凄いな。随分詳しいね」
「そりゃエセル、ターキーのローストは男の料理だからな!」
ふふん、と笑って、アイオロスは「じゃ、もう少し寝ような」と頬にキスをくれた。
………。
ローストターキーが男の料理かどうかはともかく。
(こちらの性別を忘れているあたりもともかく)
やっぱり、肉料理の知識は、アイオロスには敵わない、かな?