本日、急患扱いで、プチとロスを大学病院に連れて行った。
水曜日だったので、先代のロスが世話になったドクターが診てくれた。
彼女は、プチのお腹を触り、大丈夫なのか、と心配になるほどぎゅっと握って、
「いますね。少なくとも一匹……二匹……3匹目もいるかな?」
と言った……。
三匹?! ロスの子が?!
と思わず声を上げそうになったところ、彼女は一緒に部屋に入って来たギリシャからの研修ドクターと学生に順に触らせながら言った。
「たしか、1日にかかった、という報告でしたが、もしかしたらそれより後かもしれませんね」
「と仰るのは?」
「電話で、父親が大きいので子供の大きさが心配だと伺いましたが……みたところ、まだ小さいようです」
そうして、「このくらいよね?」と4センチほどの円を手で作って見せ、ギリシャ人のドクター(女性)に同意を求めた。黒髪のドクターは、そうね、と頷く。
思わず、気が抜けた。
妊娠したウサギはえせるの時に数回みているが、外から動いているのがわかるようになるのは数日前のことだ。昨日、それも確認できたので、てっきりもうお産が迫っているのだと……。
ウサギの妊娠は、2週間目まではわからないらしい。
えせるが最後に妊娠したときは、2週間以内だったため分からず、避妊手術のつもりが中絶手術になってしまったが、今回は触ってわかるということから、妊娠日は1ヶ月以内でかつ二週間前より前、ということなのだろう。
「勿論、1日にかかった可能性もあります。その場合は、子供も大きくないので、二、三日のうちに無事出産するでしょう。問題は、実際に妊娠したのが1週間から十日遅れていた場合ですね。その場合は、まだ子供が大きくなるから、ご心配の件が浮上する可能性があります。ソナーで大きさを確認する方法がありますが、麻酔が必要になりますから、今日はやらない方がいいと思いますよ。あと1週間か二週間たっても産まれず、不安だったらもう一度連れて来て下さい」
それから、緊急時には帝王切開をするので、産み始めて、2時間連続で息んでいてもまだ出て来ない状態だったら、すぐに急患で連絡してくれ、とアドバイスを頂いた。
「まあ、大きなお父さんとかけあわせるのはするべきではないけれど、お母さんの血も半分継いでいるわけだから、必ずしも子供が大きくなる、というわけではないのよ」
よほど私が不安げな顔をしていたのか、ドクターはそういって笑った。
ドクターは二人とも女性、なんだか、肝の座り方が違う、と思うのは私の気のせいか?
(しかし、控えていた男子学生も、なんとなく居心地悪そうだったのだが)
ドクターは、一緒につれていったロスも調べて、8月にadoptして今頃子供が出来るというのは、十中八句精管切除手術をしたが、その後繋がってしまった例だろう、と言った。
通常、精管切除の場合、ただ切るだけでは繋がってしまうので、長めに精管を切り取ったあと、プラスチックのようなもので繋がらないよう塞ぐらしい。が、まれにそれでも繋がる事があるという。
矢張り、安全なのは精巣ごと取ってしまう方法だから、今日手術の予約をして行け、と勧められた。
えせるが最後に妊娠して結局中絶手術になってしまった時、(先代の)ロスの手術を強く勧められたのに、思い切れなかった。まだ十分体力のあったあのときに手術していれば、ストレスが軽減されてその後のエンセファリトゾーンの発症もなく、今でも元気に暮らしていたかもしれない、と今でも後悔しているので、今回はアドバイスに従って手術の予約を入れた。
来月の11日が手術日だ。
さて、手帳に予定を書き込んで、顔を上げると、プチがギリシャ人ドクターの手の中でうっとりと撫でられていた……
私にはそんなに気持ちよく撫でられた事がないのに?!
と驚いて見ていると、「彼女(ドクター)も妊娠しているのよ」とドクターが笑った。
………。
やはり、母性には、何をどう逆立ちしても勝てない、と思うのは、私だけか???