シューマンの指

祥曲です。サンフランシスコにおります。
ちょっと風邪ひいて昨日の発表もヤバかったのですが、なんとか終了しました(色々問題は多かったが…(汗))発表以外はひたすらホテルで寝まくって、なんとか持ち直しつつ。
ホテルでカンヅメ中に、成田空港で衝動買いした一冊の本を読破しました。
2010年にシューマン生誕200周年を意識して書かれたらしい、講談社文庫、奥泉光著「シューマンの指」という本です。丁度今年10月に文庫になって、あの小さな本屋にも入荷されていたらしい。
ちらっと見て、こりゃシューマン礼賛小説だ、というのは分かった。それで、その場で買って飛行機に乗りました。


結論を言うと、この本は滅茶苦茶「買い」でした。私には。
何がすごいって、14ページにもわたって、一曲を弾いている奏者の描写をするなんての、芥川賞作家でもアリなんだ?! って……(笑)(芥川賞作家だから許されるのか?)
それ以外のところは、もうオタク知識の洪水。こんなの喜ぶ奴、よっぽどのクラシック音楽フリークでしょう。だって楽譜知ってないとわからんような文章がバカスカでてくるんですよ(当然私も知らない、あとで楽譜探して読み直すわ)こんな同人誌みたいな本、講談社から出しちゃっていいわけ?!(笑)
まあ、話としては、ぶっちゃけ、よくある天才モノです。陰のある早熟の天才ピアニスト(15歳〜17歳♂)と、それより二つ年上の凡人ピアノ科志望学生の主人公(♂)。天才がシューマンについての訳わからん蘊蓄を述べるのを、凡人の主人公は分からないながらも惹き付けられて目が離せない、みたいな。
しかし、その天才君が色白の肌に紅をひいたような赤い唇の持ち主で、ピアノの師匠(勿論♂)に迫られて、断ったから破門されたとか、美術の先生(これも♂)と実はイイ仲かもしれないとか、主人公の妄想の中でピアノの上で犯されてたりとか、挙げ句の果てに主人公とキスしちゃうに至っては、いったいどこのBLだ、とマジ思いましたよ……ああそう、師匠が同性の弟子に手出すとか、別に堂々とやっちゃっていいんだ、ふーん、みたいな(笑)<ちょっと免罪符を貰った気分♪ 唯一の難点は、結末がしょぼかったことで、最初から猟奇的な出だしで期待させてくれた割には、オチはなんじゃこりゃ、な感じでした(笑)まあ、シューマンが題材、ってところで、当然予想すべきオチでしたが、もうちょっと捻りが欲しかったなー。 ってか、あの余計な最後の一節は綺麗さっぱり取り去って、あのまま悲劇の天才修人君は凡人の主人公のピアノに一縷の慰めを得ながら外国へ旅立ち、主人公が愛憎を抱きながら彼を追って放浪の旅に出る、でも全然よかったのに、とマジ思う(笑) ホント、なんでそうしなかったんだろうか。そしたら続編が書けたのに(笑) しかし、こうしてみると、自分はあそこまでは書けんな、としみじみ思いました…… 主人公は、天才君がシューマンのピアノ協奏曲を弾く姿を、一楽章から三楽章まで、動作の一挙一動、音楽の作り方やフレーズ、最後の会釈の場面まで想像しているのですよ…(この間3ページ)。 いや、バーロウさんやルビエさんやリオーネさん(フェアファクスさんは知らない)は、恋人の演奏姿を思って同じ事をやるだろうが、それを文字に出来るか、といわれたら、私には出来ん。 そんな、人の脳内Hを覗き見て文章にするような事、恥ずかしくてやれませんよ、ええ!(爆) だって、カミュの目がミロの何を追ってるかとか、それで何を感じるかとか、全部丸見えなんですよ?! ある意味、モノホンHを書くよりずっと恥ずかしい。そんな気がする。 まあ、それがやれるからプロの作家なんだろーな、とマジ思います。。。 ……そんなわけで、音楽蘊蓄とBLが大好きな方には、この本はちょっとおすすめです。今なら多分文庫出たばかりだから、本屋に並んでるんじゃないかな。 ちなみに、落ちちゃった本ですが、どうせ落ちたんなら、とやっぱりオンデマンドで出すことになりました(^^;) 只今英子さんが原稿手直し中。このままいくと、冬コミシーズンにかかってもしかしたら発行がかなり遅れるかも、な気もしますが(^^;)必ず出しますので気長に待ってやって下さいませm(_~_)m (英子さん頑張れ〜!(^^)) では、これからもう一冊のネタ本読みます。 (またシューマンだったり。。) あ、今日はモーツァルトの命日だ! 合掌。

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